コミック百合姫Sで連載された袴田めら「会長と副会長」の感想です。
百合姫S創刊初期から連載してた本作ですが、休刊が決まってようやくコミックス化されましたね。
2年以上連載していた長期作品は自由奔放な生徒会長と真面目な副会長という定番百合カップルです。
自分とは何もかもが正反対の会長に恋してしまった副会長の切ない想いが綴られています。
感想は続きからどうぞ。
生徒会長の藤と副会長の梨塚は性格が全く違うコンビです。
藤は不真面目で自由奔放、怠け者でお調子者ながらもカリスマ性があって皆から好かれる存在。
梨塚は生真面目で融通が効かず、現実主義で人付き合いが苦手な為親友と呼べる友人が居ません。
梨塚にしてみれば藤の不真面目さは許し難く、しょっちゅう怒っては眉間にしわを寄せてます。
それに対し藤会長は全く反省の色を見せないから、梨塚の苛立ちはさらに募りますよ。
しかしそれでも許してしまうのは藤の優しさが梨塚にとって何よりも心揺さぶるものだからです。
会長に特別に想われてるのではと思い込み、副会長は少しずつ彼女への想いを募らせていきます。
二人だけの時間を持ったり、誰も知らない一面を知ればそう思うのも当然ですよね。
ましてや人付き合いを苦手としてる梨塚にとっては、特に親しくしてくれる藤は一番長く近くに居る存在でしょうから。
藤と一緒にお昼を食べるようになった梨塚は珍しくお弁当を持って来た彼女に料理の仕方をダメ出しします。
余りにもお弁当が不味そうだった為アドバイスしてあげた訳ですが、それを聞いた途端泣き出してしまう藤です。
余計な事を言って嫌われてしまったと思った梨塚は授業中に泣き出してしまいますよ。
でも藤は自分も不味いと思ってた事を明かしてすぐに藤を許してあげます。
泣いてしまったのはそれを作ったのが別居中の母親で、滅多に無い事だから嬉しかった為のようです。
会長の家庭事情を知ってまた一つ想いを募らせる副会長は、学校行事のオリエンテーリングでついに気持ちが溢れ出してしまいます。
暑さで立ち眩みした藤が梨塚を押し倒すような形になってキスしそうになり、彼女の心臓は興奮の余り破裂寸前になります。
そして梨塚はそのまま眠ってしまった藤を見て、首筋にキスをしてしまいました♪
これで完全に藤の虜になってしまった梨塚は彼女の前で不自然な態度を取りまくり。
回りも明らかに意識してると梨塚の気持ちに気付きます。
もちろん藤は全く気付いてませんがね。
会長に顔を触られて真っ赤になる副会長が可愛いですね?。
しかし人気者の藤には他にも慕う娘がおり、書記の桃井は梨塚が彼女を好きな事に気付いて意地悪します。
桃井から藤の彼氏疑惑を教えられた梨塚はショックの余り一人涙を流しますよ。
自分が失恋してしまったと思った梨塚はようやく自分が藤を好きになってた事に気付きます。
元々ネガティブな梨塚はこうなるととことん思い詰めてしまい、藤が男に抱かれる所を想像してさらに悲しみますよ。
するとそこに藤がやって来、泣いてる所を見られて心配される梨塚です。
藤を困らせたくないと初めは理由を話そうとしなかった梨塚ですが、会長の優し過ぎる優しさについには気持ちが爆発してしまいます。
そして梨塚は藤に好きなった事を告白し、不意打ちでその唇を奪うのでした。
例えこれまでの関係に戻れなくなると解っていても溢れ出る想いを抑えられなかったようです。
普通なら好きな人とのキスに喜ぶものですが、梨塚の場合は絶望してましたよ。
梨塚の気持ちを知った藤は彼女を冷たく突き放す事なく、これまでと以上の優しさで接してあげます。
これからの事を話し合おうと言う藤の家にお泊まりする事になった梨塚は、そこで桃井に見せられた藤の彼氏らしき人物が彼女の父親だと気付きますよ。
これで一安心した梨塚ですが、会長から思わぬ告白の返事を聞かされて困惑します。
藤が生徒会長になった理由。
それは不特定多数の誰かから特別な人になりたかったからだと彼女は言います。
梨塚に愛されて素直に嬉しいと感じているようですが、他の女の子からも愛されたらきっと浮気してしまうだろうと藤は告白しますよ。
堂々と浮気宣言された梨塚ですが、好意を寄せてくれる藤を拒む事が出来る筈も無く、彼女が求めるまま身体を差し出してしまいます。
藤に抱かれた事で幸せを実感する梨塚ですが、それはすぐに不安へと変わってしまうのでした。
藤が桃井と親しくしてるのを目撃した梨塚は一人で悩み、またも恋を諦めようとして考えてしまいます。
覚悟していた事とはいえ、やはり好きな娘が他の女の子と関係を持つのは堪えられないと思ったようです。
するとそこをまた藤に見つかってしまいますが、何やら様子がおかしく突然泣き出す会長です。
どうやら桃井はきっぱり振られてしまったらしく、そこで梨塚はやっぱり藤への想いを諦めきれないと逃げた彼女を追い掛けます。
藤が泣いた理由は両親の離婚が決まり、そこで初めて自分の身勝手さに気付いたからの模様。
父親が再婚する事を知って自分にも独占欲があった事に気付き、にも拘らず梨塚の藤を独占したいという気持ちを蔑ろにした事にどうしようもなく自分が嫌になったようです。
自分には副会長を好きになる資格は無い、これ以上勝手したら何もかも失ってしまうと思い込む会長ですが、梨塚は彼女を許して全てを受け入れてあげるのでした。
それから2ヶ月後。
文化祭で藤はメイド服を着、梨塚はメガネを外して侍のコスプレをして盛り立てます。
普段とは違う梨塚の姿に藤は気持ちの変化が生じ、ハッキリと彼女を意識してしまいますよ。
さらに梨塚の意外な格好に他の女生徒もちやほやし、それを見てヤキモチ焼いてしまう藤です。
そして追い詰められた藤は皆の前で堂々と梨塚を自分のもの宣言してしまいます。
藤を独占したいという気持ちに気付いた藤は同時に彼女を好きになっていた事にも気付いたようです。
帰り道で藤は梨塚に好きと告白し、会長と副会長はようやく両想いになるのでした♪
梨塚副会長の藤会長に対する気持ちの変化と好きになってからの切ない心理描写が魅力的な一冊でしたね。
女の子を好きになってしまった女の子の葛藤を非常に簡素で分かり易く描いていたと思います。
ただそれだけでは終わらず、藤の不特定多数の愛と好きな人を独占したいと思う心という誰もが持ってる欲深さを交えていたのが上手いな?と感じました。
もし梨塚が先に告白しなかったら藤は桃井を受け入れていたかも知れません。
両親が離婚しなかったら自分の中の独占欲にも気付かなかったでしょう。
最後に会長と副会長が恋人になれたのは幸福と不幸がタイミング良くやって来たからだと思います。
それはまさに奇跡のような、運命的な確率で成立した恋な気がします。
これからも梨塚は藤の事で悩み続け、藤は失う度に後悔するでしょう。
それでも二人が一緒に居る限りこのカップルは幸せになれるだろうと感じました。
こういう切なくて感動的な百合漫画は是非ともより多くの百合好きに読んで欲しいですね。
やっぱり袴田めら先生の描く百合漫画は本当に凄く面白いな?。
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